世界で数社しかつくれない製造技術とは全く異なる道を。

太陽化学様 ショ糖脂肪酸エステル開発

  • 業界・業種:素材食品

  • プロセス:有機合成

開発の背景

「マイクロ波の特徴を最大限活かすためには?」
という発想から生まれた製造技術

ショ糖脂肪酸エステルとは、砂糖・水・脂肪酸からできている食品添加物です。
身近なところでは、コーヒーや紅茶、パン、チョコレート、クッキーなどの食品に使われており、食品品質の安定や、流通における食品の老化防止、食感の向上などに役立てられています。

但し、製造するにおいては参入障壁が非常に高く、世界でも生産できる企業は数社しかありません。
このような現実の中、機能性食品素材などの製造をしており、マイクロ波利用にすでに実績があった太陽化学とマイクロ波化学は、ショ糖脂肪酸エステルの開発をスタートしたのです。

マイクロ波活用の意味

ショ糖脂肪酸エステルの反応が起きている
場所だけにエネルギーを。

世界で数社しかショ糖脂肪酸エステルをつくれない理由は、反応段階でいろいろな性質のショ糖脂肪酸エステルが副次的に合成され、さらに目的の性質のショ糖脂肪酸エステルを精製するのに大きなエネルギーと設備が必要だったからです。
そこで、業界参入を進めるにあたってはマイクロ波の特徴を最大限に生かすための、これまでの方法とは抜本的に異なる製造技術の開発をスタートさせました。

その技術とは、マイクロ波によってショ糖脂肪酸エステルができる、正にその場所に選択的にエネルギーを与え、瞬間的に反応を起こすことで、必要な性質、機能をもったショ糖脂肪酸エステルだけをつくり出すというものでした。

この技術はこれまでのプロセスを大幅に簡略化する画期的なものでした。しかも、最もニーズが高い性質を持ったショ糖脂肪酸エステル(以下HLB1)が多く合成されるため、後工程の精製も容易になりました。

開発ストーリー

最も難しい精製への挑戦。

2013年、HLB1の合成に向けた反応条件と、その後のHLB1の精製条件の探索を開始しました。
日々、研究に力を注ぎ、2年の月日を重ね、ようやく求める品質のHLB1を手にすることができたのです。

この結果を受けて、2015年、太陽化学とマイクロ波化学は、ショ糖脂肪酸エステル製造の合弁会社であるティエムティ株式会社を設立。2017年、三重県四日市市に工場を完成させました。
この工場では、従来の製造プロセスの1/2のエネルギー消費で、高品質高純度のショ糖脂肪酸エステルを、年間約千トン生産することを可能にしました。

製造設備外観

社会的意義

マイクロ波プロセスのグローバルスタンダードへの一歩。

ティエムティ株式会社は、2024年3月10日に発表しました通り、2024年10月に解散することになりました。

今後、本件で得られたマイクロ波プロセス開発と製造販売の知見を活かし、食品関連領域における社会実装を進めていきたいと思います。