噴霧乾燥

2022.07.25

  • 業界・業種:素材医薬品食品

  • プロセス:乾燥・濃縮・脱水

開発における社会的ニーズ

設備のコンパクト化と省エネ化に貢献

噴霧乾燥は、乳製品などの食品、インスタントコーヒーなどの飲料、医薬品、化学触媒といった、細かな粉体を得るためにしばしば使用されるプロセスです。

熱風とともに液体を噴霧することで乾燥し、粉体を得ます。商業規模となると、ビルの数階分もの高さに匹敵する重厚長大な設備の導入が必要になります。それだけでなく、エネルギー消費も一般的に大きいプロセスであると言われます。

また、熱風による過加熱が生じるために、乾燥後製品の品質劣化が問題になるケースもあります。

スクリーニング試験の内容と結果

乾燥エネルギーとして熱風とマイクロ波を併用可能な噴霧乾燥機を独自に設計・製作し、18% 食塩水の乾燥実験を行いました。

熱風へマイクロ波のエネルギーを追加すると、熱風単独のときに比べ噴霧量を大きくすることができます。マイクロ波の利用によって、噴霧乾燥機一基あたりの生産性を改善できるため、製品あたりの設備償却費を下げられる見込みです。

また、以下の実験では、マイクロ波利用による低温化を試みました。従来の熱風単独条件(青線)では、出口温度を低くすると(青バンド帯)乾燥に必要なエネルギーが供給されず、十分に乾燥することができません(出口60℃、入口100℃)。しかし、熱風温度を上げすぎれば、製品品質や乾燥後の溶融、詰まりなどに悪影響を及ぼします。マイクロ波との組み合わせ(オレンジ線)を活用すれば、これを乾燥(出口56℃、入口75℃)できる可能性も確認しました。

マイクロ波活用の意味

マイクロ波は物質へ直接エネルギーを伝達することができますが、気体を加熱することはできません。したがって、噴霧乾燥機内のガスは加熱せず、噴霧された液滴だけが加熱されます。

図:噴霧された液滴(三角部分)と周囲の気体の温度分布イメージ

今後の展望

コストダウンと品質改善を両立する技術に

噴霧乾燥は、食品や医薬など幅広い製品の製造に利用されており、世の中のものづくりに欠かせないプロセスです。しかし、製品や周囲の気体も含めた“全体”へ“間接的に”“過剰な”エネルギーが供給され、しばしば効率の低さや加熱劣化が問題になっています。

マイクロ波は蒸発しなければならない溶媒(水など)を選択加熱し、製品や周囲の気体は加熱しません。水をはじめとして、溶媒にはマイクロ波を吸収しやすいものが多いため、広範な製品におけるマイクロ波優位性の発現が期待されます。当社が開発している凍結乾燥技術と合わせて、これら乾燥プロセスの包括的なイノベーションを目指します。(SD:噴霧乾燥、FD:凍結乾燥)