ペプチド固相合成装置 (PharmaWave-1)

2022.07.25

  • 業界・業種:医薬品

  • プロセス:有機合成

開発における社会的ニーズ

実験室ではすでに普及。マイクロ波による高純度・高効率な製造を身近なものに。

ペプチドはアミノ酸が連結した化合物で、血糖値の制御に関連するインスリンもペプチドのひとつです。ペプチド医薬品の多くは、疾患の治療を目的として人工的に設計されており、製薬企業をはじめ多くの企業によって研究開発されています。市場は成長し続けており、2030年には5兆円程度の規模になると予測されています。

 ペプチドは、アミノ酸同士の連結反応を繰り返すことで合成されますが、実験室では、マイクロ波がまるで電子レンジ感覚で広く用いられてきました。一方、商業規模のマイクロ波装置は普及していないため、世の中の患者さまに薬を届けるにあたっては、他の化学品と同様の加熱方法を用いざるを得ませんでした。外から全体を間接的に加熱することによって、合成純度が低下したり、加熱時間がかかるといった課題が発生していました。

試験内容と結果

あるペプチド医薬を、同じ条件で従来加熱法またはマイクロ波法で合成しました。その結果、製造時間および原材料費(当量)の削減効果を確認しました。

従来加熱とマイクロ波の比較

マイクロ波活用の意味

マイクロ波は、外から全体を加熱する方法(ジャケット加熱)とは異なり、内部から選択的に反応点を加熱します。

 また、双極子の回転によりペプチド鎖の凝集を解除し、反応点を露出させる効果も知られています(J. Pept. Sci., 2007, 13. 143-148)。医薬品製造における純度は極めて重要ですが、マイクロ波を利用すれば合成収率・純度の向上を実現できます。

今後の展望

製造規模(数百リットル)までのラインナップ整備。マイクロ波をペプチド製造のメジャーに。

当社は2019年、マイクロ波設備としては世界最大級のGMP(医薬品、医薬部外品の製造管理および品質管理の基準)準拠設備を、ペプチスター株式会社に導入しました。数千リットル規模の化学品製造で培った当社の知見を活かせば、ペプチド合成装置も数百リットル以上の規模へスケールアップできる可能性があると考えています。当社は当該装置を販売展開し、マイクロ波固相合成による高純度・高効率なペプチド製造を広めてまいります。