ポリマー乾燥

  • 業界・業種:素材石油化学高機能化学

  • プロセス:乾燥・濃縮・脱水

開発における社会的ニーズ

多大なエネルギーが必要な工程

ポリマー(プラスチック)製造の最も重要なプロセスである重合の中に「乳化重合」というタイプがあります。例えば高吸水性ポリマー(SAP)であるポリアクリル酸や、ポリスチレン、アクリル樹脂なども乳化重合を用いて製造される場合が多いですが、乳化重合は媒体として水を使うため、重合後に水が付着した状態で取り出されます。したがって、製品加工プロセスに移る前にしっかりと乾燥させる必要がありますが、この乾燥工程に多くのエネルギーを要するのです。

スクリーニング試験の内容と結果

マイクロ波は、電子レンジでコンビニのお弁当を加熱することでわかるように、一般的にプラスチックはマイクロ波をあまり吸収しないため加熱されません。一方、水はマイクロ波を非常に吸収しやすいため、よく温まります。お弁当の中身は熱々になっているけれど蓋は簡単に触ることができるのは、マイクロ波が水を選択的に加熱しているからです。

これと同じ原理をポリマー乾燥に活かすことができます。水のみを選択的に加熱することにより、熱風を用いる通常の乾燥方法と比べて速く、省エネルギーで乾燥をさせることが可能になります。さらに、ポリマー自体を加熱するわけではないため、熱劣化も抑制することができ、まさに一石二鳥です。

マイクロ波活用の意味

いくらマイクロ波が水と相性が良いからといって、例えば水分が90%も含まれているような状態だと、加熱対象がほぼ全てを占めてしまうためマイクロ波の選択加熱性が生かしにくく、全体加熱とほぼイコールになってしまいます。これに対し低含水領域(減率乾燥領域)では、マイクロ波による水への選択加熱性を如実に出すことで大きな効果が得ることができるため、たとえば乾燥前半は熱風で行い、後半をマイクロ波で行う、あるいは同時に両方を使用する、というような組み合わせも考えられます。

含水率変化60%→10%36%→10%
Conventional process
(熱風のみ)
100100
MW process
(MW + 熱風併用)
7560
消費エネルギー見積もり

今後の展望

使用の増加が見込まれる水系塗料の乾燥にも

ポリマー乾燥の原理は、重合工程後の水分除去以外にも利用することが可能です。例えば、大気汚染防止法で揮発性有機化合物(VOC)排出規制の対象となる塗料は有機溶媒の利用から水系への切り替えが求められています。しかしながら、有機溶媒に比べて水は沸点が高く(100℃)、同じ沸点レベルの有機溶媒と比較した場合でも蒸発潜熱が大きいため、乾燥工程に従来よりも多くのエネルギーを使用しなければなりません。これをマイクロ波による乾燥プロセスに切り替えることで、従来法よりも圧倒的に乾燥時間を短縮し、省エネ化につなげることが可能になります。下図のように厚みがμm単位の塗料においてもその効果が確認されており、今後も展開領域が増えていくと考えられます。