2016.01.25PRESS RELEASE
化学産業分野の省エネルギー化に貢献 GaN増幅器モジュールを加熱源とする産業用マイクロ波加熱装置を開発
2016年1月25日
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
三菱電機株式会社
国立大学法人 東京工業大学
龍谷大学
マイクロ波化学株式会社
化学産業分野の省エネルギー化に貢献
GaN増幅器モジュールを加熱源とする産業用マイクロ波加熱装置を開発
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「クリーンデバイス社会実装推進事業/省エネルギー社会を実現する高効率高出力マイクロ波GaN増幅器」において、三菱電機株式会社、国立大学法人 東京工業大学、龍谷大学、マイクロ波化学株式会社の4者は、出力電力500WのGaN※1 増幅器モジュールを加熱源とする高効率な産業用マイクロ波加熱装置を共同開発しました。これにより、産業用加熱装置のエネルギー消費の70%低減※2 と化学物質生成時の生産効率性の3倍向上※3 を実現します。今後は、化学産業分野の省エネルギー化に貢献すべく、実用化に向けた取り組みを進めていきます。
※1 gallium nitride:窒化ガリウム
※2 現在主流である化石燃料を加熱源とした外部加熱方式との比較において
※3 現在主流である分散加熱時との比較において
開発の特長
1.産業用加熱装置のエネルギー消費を70%低減
・装置内部から加熱するマイクロ波内部加熱方式の採用によりエネルギー消費を70%低減
・産業用加熱装置の加熱源としてGaN増幅器モジュールを初めて適用
2.化学物質生成時の生産効率性を3倍に向上
・マイクロ波のビーム制御により、局所的な加熱を可能とする技術を開発
・試料の反応領域を局所的に加熱し、化学物質生成時の生産効率性を3倍に向上
加熱方式 | 加熱源 | 加熱状態 | エネルギー消費比 | 生産効率性比 | |
今回 | 内部加熱方式 | GaN増幅器モジュール | 局所加熱 | 0.3 | 3 |
従来 | 内部加熱方式 | マグネトロン | 分散加熱 | 0.3 | 1とする |
外部加熱方式 | 化石燃料 | 分散加熱 | 1とする | - |
今後の展開
本プロジェクトの成果を活用し、マイクロ波加熱装置の大型化に向けた開発を行い、化学プラントへの適用を目指します。
開発の背景
GaN増幅器モジュールは、Si(シリコン)やGaAs(ガリウムひ素)を使用した増幅器モジュールに比べて高出力が得られるとともに装置の小型化に貢献します。近年では通信・レーダー分野においてGaN増幅器モジュールへの置き換えが進められているほか、高効率という特長を活かして産業分野での新たな活用も期待されています。
三菱電機株式会社、国立大学法人 東京工業大学、龍谷大学、マイクロ波化学株式会社の4者は、国内製造業のエネルギー消費の3分の1(経済産業省調べ)を占める化学産業分野の省エネルギー化に着目し、産業用加熱装置の加熱源を現在主流の化石燃料からGaN増幅器モジュールに置き換え可能なマイクロ波加熱装置を新たに開発しました。これにより、化学産業分野の省エネルギー化に貢献します。
開発の特長の詳細
1.産業用加熱装置のエネルギー消費を70%低減
現在主流である化石燃料を加熱源とする外部加熱方式は、試料を加熱する前に装置自体を加熱する必要があり、その分のエネルギーが無駄に消費されています。そこで、GaNデバイスを用いた出力電力500WのGaN増幅器モジュールを開発し、電子レンジと同じ原理で試料を局所的に加熱するマイクロ波内部加熱方式の採用を可能にしました。これにより、エネルギー消費の低減を実現します。
2.化学物質生成時の生産効率性を3倍に向上
現在、マグネトロンを加熱源としたマイクロ波内部加熱方式は一部導入されていますが、マグネトロンは位相コヒーレンス※4 が低いために大電力化が難しく、従って、燃料油や石炭などの試料を分散的に加熱するしかなく、加熱装置内部で生成される化学物質の大量生産が困難でした。
一方、GaN増幅器モジュールが出力するマイクロ波は位相コヒーレンスが高いため、加熱源にGaN増幅器モジュールを採用することで大電力化が可能となります。さらに位相を制御することにより温度分布を自在に制御し、局所的に内部加熱することで、化粧品やインク塗料などの化学物質生成時の生産効率性を向上します。
※4 マイクロ波などの電波のもつ性質の1つであり、位相に一定の関係性があることを表す指標
<各社・各大学の主な開発内容>
三菱電機株式会社 | ・GaNデバイスの製造・マイクロ波GaN増幅器モジュールの開発 |
国立大学法人東京工業大学 | ・試料選定、マイクロ波加熱による生産効率性の妥当性、および生産効率 向上に向けた基礎実験・標準化活動 |
龍谷大学 | ・マイクロ波GaN増幅器モジュールの設計・マイクロ波加熱装置の高効率化の基礎検討 |
マイクロ波化学株式会社 | ・GaN増幅器モジュールを加熱源とするマイクロ波加熱装置試験炉の スケールアップ、低消費電力化の有効性の実証実験 |
今後の展開の詳細
<三菱電機株式会社>
マイクロ波加熱装置に適用するGaN増幅器モジュールを2016年度以降実用化する予定です。さらにGaNデバイス・GaN増幅器モジュールは気象レーダーなどのレーダー事業や無線通信基地局などの通信事業に幅広く展開していきます。
<国立大学法人 東京工業大学>
マイクロ波加熱により化学反応が大幅に向上するメカニズムを解明し、化学物質生成のさらなる生産性向上方法を検討します。
<龍谷大学>
マイクロ波GaN増幅器の効率向上のための新規回路を検討します。また半導体増幅器の特長を活かした新しいマイクロ波加熱装置の基礎検討を続けます。
<マイクロ波化学株式会社>
マイクロ波GaN増幅器などの半導体増幅器を用いた工業用加熱炉のスケールアップによる化学プラントへの適用を検討します。
お問い合わせ先
<報道関係>
三菱電機株式会社 広報部
〒100-8310 東京都千代田区丸の内二丁目7番3号
TEL 03-3218-2359 FAX 03-3218-2431
国立大学法人 東京工業大学 広報センター
〒152-8550 東京都目黒区大岡山二丁目12番1号
TEL 03-5734-2975 FAX 03-5734-3661
龍谷大学 学長室(広報)
〒612-8577 京都市伏見区深草塚本町67番地
TEL 075-645-7882 FAX 075-645-8692
マイクロ波化学株式会社
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-8 テクノアライアンス棟3階
TEL 06-6170-7595 FAX 06-6170-7596
E-Mail info@mwcc.jp
<開発関係>
三菱電機株式会社 情報技術総合研究所 業務部
〒247-8501 神奈川県鎌倉市大船五丁目1番1号
TEL 0467-21-2828 FAX 0467-41-2142
国立大学法人 東京工業大学 大学院理工学研究科 応用化学専攻 教授
和田 雄二
〒152-8552 東京都目黒区大岡山二丁目12番1号
TEL 03-5734-2879 FAX 03-5734-2879
龍谷大学 理工学部電子情報学科 石崎研究室
〒520-2194 滋賀県大津市大江町横谷1番5号
TEL 077-543-7798 FAX 077-543-7428
マイクロ波化学株式会社
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-8 テクノアライアンス棟3階
TEL 06-6170-7595 FAX 06-6170-7596
E-Mail info@mwcc.jp
<国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構>
電子・材料・ナノテクノロジー部 主査
栗原 廣昭
〒212-8554 神奈川県 川崎市幸区大宮町1310
ミューザ川崎セントラルタワー
TEL 044-520-5211 FAX 044-520-5212