マイクロ波吸収能検証 ー周波数選定ー

マイクロ波吸収能検証

当社の開発プロジェクトのすべては、この複素誘電率の測定から始まります。

ラボ検証においてはターゲット物質の複素誘電率を測定しマイクロ波吸収能力を評価します。この結果に基づき合成条件や処理条件及び周波数特性を探索していきます。

この検証で基本的な情報を全て入手しますので非常に大切なステップです。

マイクロ波の反応系を構築する上で、重要なことは、何が、どの程度、どのような条件でマイクロ波を吸収するのかを把握することです。

ここで、単位体積あたりのマイクロ波による熱変換エネルギーP(W/m3)を下記に示します。

熱変換エネルギーP(W/m3)

(E: 電場強度 [V/m] H: 磁場強度 [A/m] s導電率 [S/m]: 磁気損失係数 [-])

それぞれ Pσ,Pε,Pμは、導電損失、誘電損失、磁性損失と呼ばれ、導電体、誘電体、磁性体 がマイクロ波と相互作用した損失を示します。

一般的なマイクロ波を用いた有機合成反応では、アルコールに代表されるように誘電損失を用いるケースが多いです。誘電損失は、マイクロ波の電場強度Eの平方、誘電体の複素誘電率の虚部(誘電損失係数)ε”、周波数ωに比例し、その誘電損失係数は、温度依存性、周波数依存性を強く示します。この誘電損失係数ε”が、いわゆる、物質のマイクロ波吸収の指標となります。

マイクロ波と相互作用しやすい物質の例として、導電体はカーボン材料やイオン性物質、誘電体は水やエチレングリコールなどの極性物質、磁性体はフェライト、ニッケル、コバルトなどが挙げられます。

エチレングリコールの誘電損失係数の周波数依存性、温度依存性グラフ
エチレングリコールの誘電損失係数の周波数依存性、温度依存性

縦軸が誘電損失係数、横軸が周波数(0.1-20 GHz)であり、20℃から180℃までの温度依存性を示しています。電子レンジと同じ2.45 GHzの周波数におけるエチレングリコールのマイクロ波吸収能は、20℃から180℃の昇温に伴い、激的に減少していきます。

一方、昇温に伴い高い周波数側にピークがシフトしていくのが分かります。

物質が異なれば、このマイクロ波吸収のプロフィールも異なるため、反応系を構築する上では、開発対象の反応系を構成する物質のマイクロ波吸収能、つまり複素誘電率の温度依存性、周波数依存性を把握することが極めて重要です。

複素誘電率測定装置の写真
複素誘電率測定装置

複素誘電率ライブラリ

当社は、これまでの開発で取り扱った物質について、温度・周波数・複素誘電率の3次元ライブラリーデーターベースを有しています。

実際には、基質、触媒、溶剤などの構成要素の複素誘電率を踏まえて、マイクロ波を伝達・吸収させたいターゲットを選択し、それに適した周波数、ラボ装置を選定し、反応条件を最適化します。

  • エチレングリコール 複素誘電率 ε'

    エチレングリコール 複素誘電率 ε'

  • エチレングリコール 複素誘電率 ε″

    エチレングリコール 複素誘電率 ε″

  • グリセリン 複素誘電率 ε'

    グリセリン 複素誘電率 ε'

  • グリセリン 複素誘電率 ε″

    グリセリン 複素誘電率 ε″

  • ジエチレングリコール 複素誘電率 ε'

    ジエチレングリコール 複素誘電率 ε'

  • ジエチレングリコール 複素誘電率 ε″

    ジエチレングリコール 複素誘電率 ε″

  • トリオレイン 複素誘電率 ε'

    トリオレイン 複素誘電率 ε'

  • トリオレイン 複素誘電率 ε″

    トリオレイン 複素誘電率 ε″

  • 2-エチルへキシルエステル 複素誘電率 ε'

    2-エチルへキシルエステル 複素誘電率 ε'

  • 2-エチルへキシルエステル 複素誘電率 ε″

    2-エチルへキシルエステル 複素誘電率 ε″

  • 水の複素誘電率 ε'

    水の複素誘電率 ε'

  • 水の複素誘電率 ε″

    水の複素誘電率 ε″

周波数選定

反応系のデザインの初期段階は、マイクロ波のエネルギーを伝達するターゲット分子の選定です。

ターゲット分子の選定には、前章の複素誘電率の測定データを利用します。

例えば、記のような触媒反応におけるターゲット分子を選定するためには、触媒分子・物質だけがマイクロ波を吸収する条件を探索します。

周波数グラフ

上記例においては、触媒を選択加熱するための条件として、低周波数のマイクロ波を選択することとなります。これにより、微視的には触媒近傍温度と周囲環境(溶媒や原料)温度とで不均衡が生じ、触媒がホットスポットとして加熱される状態となります。

反応場である触媒の選択的な加熱によって、反応時間の短縮や収率向上、不純物低減、温度低下などの多くの利点が得られます。

他にも、エネルギー伝達のターゲットを原料や溶媒とすることで、均一加熱や精密な温度制御が可能にもなります。例えば、その効果として、伝熱プロセスで課題となっていた着色や変質の課題が解消されたり、温度許容幅の狭いプロセスの制御によって副生物の低減を達成することができます。このように、ターゲットや照射条件の設定の自由度が高いことは、マイクロ波化学反応の大きな特徴です。

周波数選定イメージ