反応器デザインと数値シミュレーション

反応器のスケールアップを目指した設計では、高性能コンピュータを用いた数値シミュレーションが重要な役割を果たします。
当社の数値シミュレーション技術は、電磁場・熱流体・構造解析の三本柱からなります。目的に応じて、複数の手法を組み合わせた、連成解析という高度な技術を適用します。ここでは、当社が採用している数値シミュレーション・ソフトウェアを紹介します。

当社保有シミュレーション・ソフトウェア一覧

解析内容 シミュレーション・ソフトウェア
電磁場解析 Ansys HFSS
CST Studio Suite
熱流体解析 Ansys Fluent
Ansys Rocky
構造解析 Ansys Mechanical
マルチフィジックス
解析
COMSOL Multiphysics

電磁場解析

電磁場解析ではマックスウェルの方程式を解き、反応器内をマイクロ波が広がる様子や、マイクロ波加熱による物質の発熱量分布を可視化します。被加熱物には、当社で測定した複素誘電率の値を割り当てます。当社では、ラボ・ベンチ・実機、各スケールでの解析に対応するため、以下のソフトウェアを採用しています。

  • Ansys HFSS

    ラボからベンチ、(あまり大きくない)実機スケールの反応器を解析するときに使います。周波数ごとの電磁場の振る舞いを明らかにします(周波数領域解析)。

    図1:マイクロ波反応器内の電磁場強度分布

  • CST Studio Suite

    比較的小さいメモリ消費量で解析ができるので、実機スケールの反応器を解析するときに使います。周波数領域解析だけでなく、時間ごとの電磁場の振る舞いも計算することができます (時間領域解析)。電磁場と熱流体の連成解析にも対応しています。

    図2:実機スケールの撹拌槽内におけるマイクロ波発熱量分布

熱流体解析

  • Ansys Fluent

    熱流体解析では流体の連続の式、運動方程式、エネルギーの式、必要に応じて反応式などを合わせて解きます。それにより反応器内で化学反応が進む様子や液体の流れの様子、被加熱物質の温度変化がわかります。

    図3:反応器内における流体運動の軌跡

  • Ansys Rocky

    触媒粒子系に代表される粉粒体の挙動を調べる際には、離散要素法(Discrete Element Method; DEM)という手法を用いて、粒子の運動方程式を解きます。

    図4:流動層における、ガス及び粒子の速度分布

構造解析

  • Ansys Mechanical

    構造解析では、反応器内の高い圧力により、筐体に生じるひずみや応力値を計算します。この結果をもとに筐体の強度判定を行います。

    図5:板状の物体に発生する応力分布

マルチフィジックス解析

  • COMSOL Multiphysics

    COMSOL Multiphysics®は、マルチフィジックス解析を前提として設計されている有限要素法 (FEM)ベースの汎用物理シミュレーションソフトウェアです。複素誘電率測定により得られた実測パラメータ値から電磁場の分布を計算することができ、得られた結果からさらに熱分布解析まで1つのソフトウェアで計算することができます。マルチフィジックスという名前が表すように、反応系内の電磁波の挙動と発熱挙動を化学反応と結びつけて、考察するために有用なツールです。

    図6:開発用マイクロ波リアクター内部に置いたセラミックスサンプルの電磁場分布