凍結乾燥(JAXA様)

宇宙でも地産地消
月や火星で地中の氷から水をつくる


わたしたちは、宇宙空間での資源の「現地調達」「再利用」を実現し、持続可能な探査をめざす宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)と共同で、「月や火星の地中の氷から水をつくる技術」の開発を2016年にスタートしました。


有人での宇宙探査の活動には、スタッフの飲料水、生活用水などが必要です。しかし、水を宇宙空間に1リットル打ち上げるためには1億円がかかるといわれています。宇宙での探査を継続するためには、活動に必要となる水を現地調達することが必要なのです。


本プロジェクトでは、マイクロ波がもつ「特定の場所を選択的に加熱できる」特性を活かして、月や火星の地上から地下に存在する水氷にマイクロ波を照射することで効率的に水が回収できることを実証しました。

実績

この取り組みのベースとなったのは「凍結乾燥」という技術です。凍結させた食品を真空にすることで水分を昇華し乾燥するもので、わたしたちが日々の生活の中で目にする多くの食品にも使用されています。


わたしたちが開発したマイクロ波凍結乾燥技術は、狙った場所にマイクロ波をピンポイントで照射することにより、氷を効率よく昇華させて水として回収できるのが特長です。この技術を用い、月や火星の地下に存在する水氷において水を回収できるのかを実証しました。


2017年には凍結乾燥が可能なマイクロ波反応装置「Planet One」を製作しました。

Planet Oneの写真

開発の背景

輸送コスト削減のため、求められる宇宙空間での資源調達技術

宇宙探査、とりわけ月面探査の機運が世界中で高まっています。2017年12月11日、トランプ米大統領が月への有人探査を米航空宇宙局(NASA)に指示する文書に署名しました。日本政府も翌12日、宇宙基本計画の工程表を改定し、米国の計画に参加する方針を決めました。ロシアや中国、インドも着々と準備を進めています。

こうした動きの中で、日本の宇宙開発の中心となるのがJAXAの宇宙探査イノベーションハブです。宇宙探査イノベーションハブは2015年から民間企業との協業に取り組んでいます。

3D rendering. Astronaut walking on the moon. CG Animation. Elements of this image furnished by NASA

有人火星探査では『資源を現地調達』することで、従来に比べ輸送効率の高い持続可能な探査が求められます。惑星の土壌に含まれる水氷から水が得られれば、飲料水・生活用水に加え、水素と酸素に分ければロケットを飛ばす燃料にも使用することができます。

人類が宇宙で活動するためには、現地で水を手に入れるという、地産地消の技術を確立できるかが大きな課題となっています。

開発ストーリー

さまざまな領域の専門家が推定に推定を重ね、結果を生み出す

東京工業大学と共同で宇宙探査イノベーションハブに応募し、JAXAから正式に採択され3社で本格的にプロジェクトが始動したのが2016年12月です。


マイクロ波技術は数十年間「大型化が不可能」と言われ続けてきた技術です。このため、「マイクロ波」の開発に対してネガティブな印象をもたれることも多く、プロジェクトが思うように進まないこともあります。


しかし、JAXAでは既に小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」のイオンエンジンにマイクロ波の技術を応用されていたことから、スムーズに開発を進めさせていただくことができました。


マイクロ波反応装置内でどのようにマイクロ波が動くのかシミュレーションし、その結果を反応器の設計に反映させ、凍結乾燥システムを最適化していきます。この作業は、電磁場解析を専門とする解析チームが担当しました。


設計を進める中、反応器内に投入するマイクロ波のエネルギーがある一定の数値を超えると、サンプルである月の模擬砂の温度が上がりすぎてしまう問題にぶつかりました。月の模擬砂の温度が上がりすぎてしまうと、昇華する水分量が多すぎるため真空ポンプにダメージを与えてしまいます。


そこで反応器内の温度変化を観察しつつ、マイクロ波のエネルギー投入量や、反応器内の真空度を調整することによって、適切な乾燥が行えるよう改良しました。



「絶対条件はないが、推定に推定を重ねたことで、一つの結果を生み出せた。」と当社の担当者は当時を振り返ります。


全体システムと反応装置の設計・製作はエンジニアリング部が担当。-50℃、1Paの環境下で、マイクロ波の位相制御を成功させ、2つのマイクロ波発振源の位相差によって、加熱される水の位置が異なることを確認しました。これにより月や火星の地中に分散している水氷に集中してマイクロ波を照射することができ、より効率的に水を回収できることを証明しました。各担当者の連携が実を結びました。



プロジェクト始動から約11ヶ月後。



2017年10月にはJAXAをはじめとした関係者が集まり、装置の中に入れた砂から水を取り出すデモンストレーションと報告会が行われました。

第一実証棟での報告会の様子


JAXAの担当者からは「まだ未検証の部分はあるものの、月面深部の水氷昇華にはマイクロ波によるリモート加熱が有益であるという意見を補強する面白い結果になりました。」というコメントをいただきました。


宇宙空間で太陽光を用いてマイクロ波凍結乾燥装置を動かすことで、人々の命や活動に不可欠な水の現地回収が当たり前になる。


そんな世界を実現するために、わたしたちはこれからも開発を進めてまいります。

宇宙で水を回収するイメージ図



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